高校・中等教育教員向け 探究・STEAM教育関連情報

One Stone に学ぶ① ― デザイン思考を基盤にした「実社会」とつながる学びのプロセス

探究学習の実践において、「何を探究すればいいのか」「どうすれば表面的な活動で終わらせず、深い学びにつなげられるのか」という悩みは、多くの教育現場で共通しています。

本記事では、STEAM JAPAN編集部がアメリカ・アイダホ州のOne Stoneを訪問し、独自の探究プログラムを取材した内容をご紹介します。単なる”プロジェクト学習校”ではなく、生徒が「人として成長していく過程」そのものが丁寧に設計された学びの場でした。

※本記事は、一般社団法人STEAM JAPANの許諾を得て転載しています

探究は「一方通行」では終わらない

6つのステップを行き来する“往復型プロセス”

One Stoneの探究は、いわゆる「計画して発表して終わり」の学習とは大きく異なります。
生徒たちは、次の6つのステップを行き来しながら、1年をかけてプロジェクトを磨き上げていきます。

1. Understand(理解する)

社会課題を“構造”から読み解く

最初のステップで生徒たちが向き合うのは、「調べること」そのものです。
ニュース記事や論文、政策資料、団体の活動報告書など、扱う情報量は想像以上。

教室では、
「この問題は、いつから続いているのか」
「どんな制度や歴史が関係しているのか」
「誰が、どんな立場で関わっているのか」
といった問いが、当たり前のように飛び交っていました。

ここで重視されているのは、知識の多さではなく、課題を立体的に捉える視点
この土台があるからこそ、次の「共感」が表層的にならないのだと感じました。

2. Empathize(共感する)

データの先にいる「人」に会いに行く

One Stoneの探究で、最も印象的だったのがこのステップです。
生徒たちは、教室の外へと出ていきます。

実際の現場を訪れ、
当事者にインタビューし、
働く人の姿を観察し、
語られるストーリーに耳を傾ける。

「課題」を“情報”としてではなく、「生きている人間の声」として受け取る時間が、丁寧に確保されています。

数字や統計では見えてこない、
不安、葛藤、願い――
それらに触れた生徒の表情が、確実に変わっていくのが分かりました。

3. Define(定義する)

本当に向き合うべき課題は何か

集めた情報と経験をもとに、生徒たちは問いを絞り込みます。
マッピングやストーリーボードを使いながら、

「本当に解決すべき問題は何か?」
「私たちは、誰の、どんな困りごとに応えたいのか?」

多くの場合、最初に立てた仮説はここで覆されます。
表面に見えていた問題の裏に、より根深い構造や感情的な要因があることに気づくからです。

この「ずれる体験」こそが、探究を一段深いものにしていました。

4. Ideate(発想する)

51アイデアが、思考の殻を破る

One Stone名物とも言えるのが、「51個のアイデアを出す」ブレインストーミング。
最初は戸惑っていた生徒たちも、後半になるにつれ、明らかに思考の質が変わっていきます。

「もう出ない…」
その先で生まれるアイデアこそが、
既成概念を越えた発想でした。

荒削りでもいい。
大切なのは、制約の中でも創造できるという実感を持つこと。
その積み重ねが、生徒の自己効力感を確実に高めていました。

5. Prototype(試作する)

アイデアを、社会に触れさせる

次に行われるのは、「とりあえず形にしてみる」こと。

SNSでの発信、
小さなイベント、
ポスターやチラシ、
サービスの試作――

完璧さよりも、動かすことが優先されます。
アイデアは、ここで初めて「社会の反応を受け取る存在」になります。

6. Test & Reflect(検証と振り返り)

失敗も含めて、学びに変える

社会に投げかければ、必ず反応が返ってきます。
歓迎の声もあれば、厳しい指摘もある。

生徒たちは、その一つひとつを受け止め、プロジェクトを見直し、また次へ進みます。

成功よりも、改善のプロセスそのものに価値が置かれている点が、非常に印象的でした。

扱うのは「実在する社会の課題」

One Stoneの探究がリアルなのは、
扱うテーマがすべて実在の組織や地域の課題であること。

障がい者就労支援NPO
交通安全を担う行政機関
地域企業
移民コミュニティ
若者のメンタルヘルス支援

生徒たちは、「学習者」である前に、社会の一員として行動する存在になります。

その経験が、主体性や責任感、協働性といった非認知能力を自然に育てている――
現地での取材を通して、そう確信しました。