高校・中等教育教員向け 探究・STEAM教育関連情報

One Stone に学ぶ ②― 生徒主体の学びを育てるエッセンス

※本記事は、一般社団法人STEAM JAPANの許諾を得て転載しています

成長段階に応じて“手放していく”学び

―― One Stoneの「X・D・Y Lab」設計が育てる本当の自走力

One Stoneの探究プログラムを取材していて、強く印象に残ったのが、
「生徒の成長段階に合わせて、あえて関わり方を変えている」という点でした。

探究学習というと、「自由にやらせること」が重視されがちです。
しかしOne Stoneでは、最初から自由を与えることはしません。
むしろ逆で、成長に応じて、少しずつ“手を離していく設計が、極めて意図的に組み込まれていました。

この仕組みは、
X Lab → D Lab → Y Lab
という3つの段階で運用されています。

X Lab(初年度)

手厚い伴走で「探究の型」を身体に入れる

探究の初年度にあたるX Labでは、教室の空気がどこか落ち着いています。
その理由は、コーチ(教師)が生徒のすぐそばで、丁寧に伴走しているからでした。

インタビューの質問文を一緒に考え、
リサーチの順序を整理し、
観察の視点を具体的に示し、
ノートの取り方や資料整理の方法まで細かく確認する。

ここで行われているのは、単なる「やり方の指導」ではありません。
探究に不可欠な
「方法論」と「向き合い方(姿勢)」
をセットで身体に染み込ませる時間でした。

生徒たちは、失敗してもすぐに立て直せる環境の中で、
「探究とは、こうやって進めるものなのか」
という感覚を、少しずつ掴んでいきます。

X Labは、いわば探究の基礎体力づくり
ここでの丁寧な伴走が、次の段階で“手を離す”ための土台になっていることが、取材を通してよく分かりました。

D Lab(中学年)

主役はチーム。協働の中で自律が育つ

X Labを終えた生徒たちが進むD Labでは、教室の風景が一変します。
コーチは一歩引き、生徒同士のやり取りが学びの中心になります。

役割を分担し、
意見をぶつけ合い、
行き違いが起きれば調整し、
プロジェクトの意思決定を自分たちで行う。

そこには、スムーズに進む場面ばかりでなく、
立ち止まる時間や、衝突もありました。

しかし、One Stoneではその“うまくいかなさ”を問題視しません。
むしろ、他者と協働する難しさを引き受けることこそが学びだと位置づけられています。

この段階で生徒たちは、
「自分の役割とは何か」
「どうすればチームとして前に進めるのか」
を、実体験を通して学んでいきます。

D Labは、探究が
「自分ひとりの挑戦」から「他者と創る営み」へと広がる転換点
だと感じました。

Y Lab(最終学年)

ほぼ伴走なし。完全自立で探究をやり切る

最終段階のY Labでは、コーチの関わりは最小限です。
テーマ設定から社会への提案まで、すべてを生徒自身が担います。

取材中、多くの生徒が口にしていたのが、
「正直、伴走が減るのは怖い」という言葉でした。

誰も正解を示してくれない。
進め方も、自分で決める。
失敗しても、自分で引き受ける。

その不安を乗り越えた先で、生徒たちは大きく変わります。
プロジェクトの“参加者”ではなく、
「この探究の責任者は自分だ」
という意識が、はっきりと芽生えていました。

卒業時、生徒たちはもはや
「与えられた問いに答える存在」ではありません。
自ら問いを立て、社会に働きかける主体者として、次のステージへ向かっていきます。

「段階的に手放す」からこそ育つ、本物の自走力

One StoneのX・D・Y Lab設計を通して見えてきたのは、
自走力とは「急に放任して育つものではない」という事実でした。

  • X Lab:手をかける(基礎を育てる)
  • D Lab:手を緩める(協働で自律を育てる)
  • Y Lab:手を離す(完全自立へ)

この明確な段階設計があるからこそ、生徒は無理なく成長し、
最終的には
「自ら学びをつくり、社会に働きかけられる若者」
へと育っていく。One Stoneの探究は、方法論だけでなく、
人が自立していくプロセスそのものを、教育としてデザインしている――
現地での取材を通して、そう実感しました。